ウキウキ飛行機
離陸前から何だかそわそわしている一団。
ちょっかいかけあったり、なんか言い合って笑いあったり、お金を貯めてみんなで初めて行く旅行なのかな?みたいな雰囲気で。
飛行機の離陸するときも我先にと窓の外を見て、スマホで録画して。少し廃れた服を着ていたのは気になったけれど、楽しみにして来たんだなあという雰囲気がどのメンバーからも溢れ出していた。
遠足の団体みたいで、楽しそうだなぁ、よかったねえなんて気持ちで見ていたのだけれど、飛行機に乗って1時間くらいした頃に、隣に座っているサングラスのおじさんが私の読んでいる本をガン見していた。「ダイアリーダイアリー」って、隣のおじさんに言っていたから、「ダイヤリーというより、テキストブックだよ」って言ったのを始まりに、話が始まった。
今回のこの飛行機は彼らにとって初めての飛行機で、だからあんなにワクワクしていたらしい。これから三ヶ月、クリスマスまでセブで働くらしい。最初はペインティング!って言っていたから、アート系の団体なのかな?って思って話を聞いていたら、おそらく家を立てる人たち(土木工事系)だった。なるほど、いうならば、出稼ぎか。
話を聞いて行くうちに週6日、8時間労働(2時間オーバーワークだよ)をこれからするらしい。私が隣の二人と話すたびに他のメンバーが私を見る。なにも言わないのに私の顔をじっと見てくる人もいる。なんだこの四方から迫り来る圧力は!と思いつつ、みんな興味を持ってくれていて、話したいと思ってくれていて、なんだか私が特別になったような気持ちになって嬉しくなった。
名前を聞かれて聞いて、ローリンとR〜(また忘れてもうたばかー!)
名前を聞いてもらうってこんなに嬉しいんだね。
途中で私が旅行できたという話から、どこに行ったの?って聞かれていろいろ行った話をしたら、少し悲しそうな顔をしていた。そうよね、飛行機乗ることさえ初めてなのに。別に、かわいそうだという感情ではなくて、そんな単純な感情ではなくて、自分が立っている位置と彼らが立っている位置が圧倒的に違っていて、そして私の位置が圧倒的に恵まれているのに、私はこんなにのうのうと生活していて、自分でお金貯めて旅行来たからすごいと言われていても、でもそれは生活が成り立つという前提の上であって、その前提が成り立っていないからセブに来ているのが彼らで、そんな彼らと私が、初めてあったその時点で、楽しく話をしているというこの状況に、私は心が揺れたというか、切なくなったというか。
サングラスの彼は、片目が真っ白だった。でも私は目を背けたくなかった。そんな少しの違いで態度を変えたくなかった。けど、そう意識すればするほど、変な態度を取ってしまっているような気がしてしまって、自分がわからなくなってしまった。
なんだか普通の人たちなのに。確かに人より私に対する好奇心はとても強くて、それに圧倒されていたのだけれど、見た目は普通の人たちなのに。とても優しくて、飛行機から降りるときは、10kg以上もある私のカバンを持ってくれて、タクシーを待っている間に再会したときは、「りさ!」って呼んでくれて、こんなに素敵な人たちなのに。私は、タクシーに乗って、そのタイミングで、彼らは、トラックの荷台に立って。タクシーの中から手を振ったら、みんな手を振ってくれて。でもなにこの差は。さっきまで同じ飛行機に乗っていたのに。彼らの荷物は小学生が遠足に行く時のようなリュックひとつだった。私はたった数週間のためにめっちゃ重い荷物を背負ってるのに。彼らは三ヶ月働くためにリュックひとつで、トラックに立って、明日から働く。
体感してしまった、この自然に存在してしまう格差。恐ろしいくらいに見えない格差が、私の目の前に現れてしまった。
彼らの写真を撮りたかった。彼らの話をもっとリアリティのある形で残しておきたかったと思ってしまった。でも、わたしは、できなかった。
見えないものを、恐れてしまった。見えないものに、負けてしまった。
ふぉとひとを、もっと続けよう。その人たちにどんなバックグラウンドがあるのか、私はわからないけど、この世界にはたくさんの人たちがいて、たくさんの生活があって、たくさんの気持ちがあって、たくさんの正しさがある。
きっとそういうものがひと一人一人から出てるんじゃないなかと思う。明るい部分と暗い部分、どちらも同じように光を当てよう。どちらも、比べるものではなく、等しく愛おしく、ひとつひとつ固有のものとして考えられる人間になれるように。
友達に教えてもらって、いいなぁと思った映画「めがね」
人生で初めて、映画を見てつまらない以外の理由で寝た映画。
そしてその眠りは最高だった。
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